メゾプラズマ超高速クラスター法による太陽電池デバイス創製


アモルファス/ナノ結晶シリコン高速製膜技術開発
・X線散乱によるナノクラスターその場計測技術開発

本研究室では熱プラズマを用いたSiCやSi3N4等の耐熱コーティングやダイヤモンドなどの超高速堆積では長い歴史を有し、例えばSiCでは1mm/hの堆積速度を実現してきた。本研究では、その技術的・原理的背景に立って、現在行われているプロセスとは全く原理を異にする熱プラズマPVD・CVDにより、産業界から強く要望されている半導体薄膜の超高速・大面積テクノロジーの一端を担いうるノベルプロセシングの提案とその学術的基盤の確立を目的としている。具体的には太陽電池用結晶性Siの超高速・大面積堆積、及び耐熱半導体用エピタキシャルSiCの超高速堆積を目指している。

「シリコン系薄膜太陽電池」:低コストプロセス、高変換効率化が鍵
 アモルファスシリコン薄膜:既に市場にて産業上重要な薄膜として認識される薄膜シリコンの代表である。作製プロセスの特徴は、低圧プラズマにより多様に形成されるシラン系ラジカルのうち、活性種SiH、SiH2或いは高次ラジカルを抑制したSiH3ラジカル環境下に於いて高特性を示す薄膜が作製される。低圧プラズマ利用であるため、その基板温度は低く、ポリマー等低融点材料への薄膜堆積を可能とする特長がある一方で、逆に欠陥密度低減のための効果的水素導入のためはヒーター等による基板加熱が必要とされる。しかし最大の解決すべき課題は、低圧プロセスに起因する極めて低速の堆積速度と光照射に伴う変換効率の低下(光劣化)とされる。前者は太陽光発電の低コスト低減のための高スループット技術導入を狙う実用上の要求を満たさず、様々な手法が検討されているものの、低圧プロセスから脱却した根本を異とする堆積技術の導入が不可欠な状況にある。一方、安定化後の変換効率が7%程度と単結晶シリコン太陽電池の18%の半分以下にとどまる特性劣化の問題点は、その解決策としてモノシラン生成、イオン衝撃を制御、低減する種々のプラズマプロセスが提案されているものの、その開発動向はアモルファス母相中に光劣化の無い微結晶を分散させたポリモルファス、ナノサイズ結晶粒組織の微結晶シリコン或いはアモルファスシリコンと微結晶シリコンの特長を組み合わせたタンデム型複合型薄膜へと移行しつつある。
 結晶系シリコン薄膜:結晶系シリコンはシリコン単結晶に示されるようにその変換効率はアモルファスのそれに比して高い。しかし光吸収係数が小さいことから効果的に励起キャリアを得るために、数100nm程度の厚みのアモルファスに対し100ミクロン前後の薄膜が必要とされる。従って、結晶系シリコン薄膜においても高速堆積を可能とする堆積技術が要求される。研究開発動向は、プロセス圧力増加に伴い主に結晶系シリコンが作製され且つその堆積速度が向上し、大気雰囲気近傍においては1000〜7000nm/secの超高速堆積も報告されるように、圧力増加はイオン衝撃の低減と共に実用上有効な方向性と位置付けられる。圧力増加に伴うプラズマガス温度上昇によって高融点基体材料に限定される点は実用化展開に於いて克服すべき課題とも言える。一方、単結晶の変換効率に比して多結晶シリコンのそれは約13%となることから分かるように、その結晶粒の大きさが有効なキャリア再結合箇所となる粒界の低減に直結する。即ち、薄膜組織制御が結晶系の場合における重要な制御対象となる。理想的には低融点基体上への単結晶薄膜の超高速堆積技術であり、これに粒界、粒内欠陥を効果的に終端しうる技術を練成させれば、究極の革新的次世代太陽電池用薄膜化技術とできる。