Cubic Boron Nitride  立方晶窒化硼素

窒化硼素の主な結晶構造

マテリアル(材料、素材)の性質は主にその原子の種類と 結合の状態によって決定されます。では、ダイヤモンドのように固い物質を 生み出すにはどのような方法が考えられるでしょうか? 原子の性質を似たもの順に並べた表(元素の周期表)を見れば、 ダイヤモンド (C原子:W族)に隣り合う硼素(B原子:V族)と窒素(N原子:X族)を合成すれば ダイヤモンドに似た特性を持った新たな物質が作れそうな気がします。 実際には、ダイヤモンドと同じ結晶構造を持つ窒化硼素、すなわち立方晶窒化硼素は天然には存在しません。 しかしながらこのような物質を人工的に合成することは可能です。 この人工的な結晶が初めて合成されたのは第2次世界大戦後の1957年のことでした。 Wentorfらにより、黒鉛と同じ結晶構造を有するhexagonal boron nitirde(六方晶窒化硼素)を1800℃、8万気圧もの高温高圧 (High Temperature-High Pressure method)で相変態を生じさせることが可能であることが示されたのです。 cBNはダイヤモンドに告ぐ硬度と熱伝導度(熱の伝えやすさ)を有する物質で、鉄系の物質に対しても高温まで 安定に存在できるという優れた特性を持ちます。そのためドリルや刃物の表面に薄い膜状のcBNを合成することができれば 非常に硬度が高く、優れた磨耗耐性を有する加工、切削工具が作れるのです。また、cBNは 6.3eV(シリコンの5倍)もの広いバンドギャップを持ち、高温でも安定に動作する半導体としての性質を示します。 そのような応用(ハードコーティング材料、高温動作・耐環境半導体デバイス)を視野に入れ、プラズマ材料工学研究室ではcBN薄膜の 合成、物性評価についての研究を行っています。


化学気相成長(CVD)法によるcBN薄膜成長機構

物理蒸着法(PVD)によるcBN薄膜デバイス開発