最先端・次世代研究開発支援プログラム

プラズマスプレーPVDをコアとする次世代Liイオン電池Si系ナノ複合負極開発

H22〜H25年度@UT-DME-PME

 

【1】研究の背景:
大規模送電網(スマートグリッド)等の蓄電機器として、次世代社会基盤の中核技術とされるLiイオン電池(LIB)には,現行のLIB電池に比して更に1桁以上の高電池容量化が求められる。電極材料をナノ複合構造とすることで近づくと期待されるが,産業展開上、これらナノ複合電極を産業移転可能な技術にて実現することが不可欠である。

【2】研究の目標:
Liイオン電池の高電池容量化と高電池充放電サイクル化を両立しうる、ナノSi複合粉末負極材料の開発を目標と定める。また、用いるプラズマ技術の、高温ガス共凝縮過程の理解とナノ粒子成長機構の解明を通じて、ナノ粒子製造とナノーミクロ複合構造化を同時に実現するプロセス指針を提案する。

【3】研究の特色:
重工業分野での基盤プラズマ技術を基礎としており、開発プロセスの産業移転が容易である。且つ、冶金級金属Si原料(純度99.5%程度で1$/kg程度の廉価)の利用が可能であり、格段の低コスト化が期待できる。また,一般のナノ粒子調製技術と比して高スループット技術であると同時に、プロセス制御変数が多く,様々なナノ粒子複合化が期待される。

【4】将来的に期待される効果や応用分野:
現行LIB電池の次の実用化負極材料とされるSiOの「初期効率」「高容量化」の課題を解決する。また、従来適用範囲ではなかった太陽電池始めとする電子材料分野での、複合ナノ粒子製造技術、高純度化技術として利用可能性が拡がり、将来的な市場開拓も期待される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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主要成果:

【プラズマスプレー基本設計及びナノ粒子基本構造解析】
 金属Si粉末をSiソース,CH4ガスをCソースとしてプラズマに投入し,C/Si比を変数にプラズマスプレーを行い,これらナノ粒子性状の解析と電池特性との関係を調査した。CH4添加の有無に拘わらず,基本的に1次結晶子径20~40nmで2次粒子径が平均100~300nmのSi凝集複合体の形成が確認された。Siは少なくとも顕微ラマン観察では確認できるアモルファス成分は含まない微結晶である。CH4添加時には高温安定相である3C-SiC相が生成しCH4の増加と共に同相が増加する特徴が確認された。高分能透過型電子顕微鏡(HRTEM)によるナノ粒子構造観察とEDSによる組成分析の結果,50nm程度の単結晶Si粒子の表面に主にSi,Cを成分とするアモルファス層が2~3nm厚でコーティングするナノ複合構造であることが判明した。CH4添加量を増加させても基本的には類似のナノ構造を維持したが,SiC相が相対的に多く生成する結果となった。また,本プロセスによる原料粉末の完全蒸発が達成しうるプラズマ条件範囲を確認したところ,圧力400 ~ 500Torr,プラズマ入力90 ~ 100kWで,20%程度のH2希釈環境であれば,平均20µm程度の原料金属Si粉末は,少なくとも10 g/min程度までは完全蒸発しうること,後述のSiO原料粉末では,その昇華性の特徴を反映して,平均粒径165µmの大型粉末でも少なくとも8 g/min (~500g/h)程度まで可能であることを確認した。なお,いずれの材料の場合においても得られるナノ粒子の材料収率は〜80%であった。

SiO粉末を原料とした場合も,明確なナノ粒子化が確認された。特徴的な点は,SiO蒸気の凝縮とSiOナノ粒子の成長と同時に不均化反応が生じて,~20nm程度のSiO1次粒子中に,平均5nm程度の微結晶c-SiをSiOxで含包したコアーシェル複合構造を呈している点である。PS時のCH4添加によりSiOの還元が促進される(=含有酸素量が減少した)結果として,シェル厚みが減少し全重量比のSi成分が増加した。これら粉末を負極として利用した対局Liハーフセルでの電池サイクル試験を行った。CH4添加の無い金属Si粉末のみを原料として,後述の高度化で検討した3種類のプラズマ条件での電池容量変化を示しているが,いずれの条件においても,粉砕Si粉末のみよりもプラズマ処理することにより特性が顕著に向上する効果が確認された。特に,表記A条件(中プラズマ密度)の場合には,50回までの充放電サイクルで~1500 mAh/gを,100回でも~1000mAh/gが維持され,本課題開始当初に設定した目標値を達成することができた。一方,SiO粉末を原料としてPS処理を行った粉末の電池特性は,50回サイクル時に1000 mAh/g超える容量をクーロン効率約99.5%で安定的に維持される傾向が確認された。特に,CH4添加による還元促進の結果として含有酸素量が低減された特徴を反映して,初期効率も改善された。

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関連主要論文(査読有り):

[1] M. Kambara, et al., Nanocomposite Si particle formation by plasma spraying for negative electrode of Li ion batteries, J. Appl. Phys. 115 (2014) 143302.

[2] K. Homma,et al., High throughput production of nanocomposite SiOx powders by plasma spray physical vapor deposition for negative electrode of lithium ion batteries, Sci. Technol. Adv. Mater. 15 (2014) 025006.(OPEN ACCESS)

[3] M. Kambara, et al., Development of Nanocomposite Si anode by plasma spray PVD for next generation Li ion batteries, Earozoru Kenkyu. 29 (2014) 93 (Japanese)

[4] M. Kaga, T. Hideshima, M. Kambara, Plasma sprayed Si nano composite powders for negative electrode of lithium ion batteries, JPS Conf. Proc. 1 (2014) 015073.

[5] Narengerile, M. Kaga, M. Kambara, Synthesis and characterization of the plasma sprayed Si-Ni composite powders as negative electrode of lithium ion batteries, JPS Conf. Proc. 1 (2014) 015057.

[6] Kambara et al., "Enhanced cycle capacity retention of plasma-sprayed SiOx nanocomposite powders for negative electrode of lithium ion batteries", Jpn. J. Appl. Phys. (2014) In print.

[7] Tashiro et al., "Synthesis of SiOx-Ti nanostructured composite powders by plasma spray physical vapor deposition for negative electrode of lithium ion batteries", Jpn. J. Appl. Phys. (2014) In print.

関連主要論文(査読無し):

[1] Kambara et al., "Production of Si nano composite powders for lithium ion batteries by plasma spray PVD", Proc. Silicon for the Chemical and Solar Industry XI (2012).

[2] Narengerile, et al., Synthesis of Si/Ni composites by plasma spray PVD for negative electrode of lithium-ion batteries", Proc. 21th Int. Symp. Plasma Chem. (2014).

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リンク:
日本学術振興会
最先端・次世代研究開発支援プログラム(内閣府)